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陽子線治療は正常細胞への影響が少ない体に優しい照射装置
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陽子線治療は,通常のエックス線を利用した定位放射線治療やIMRTよりもさらに腫瘍部への集中度が高く,正常組織への影響が少ない放射線治療です。
陽子線治療では,陽子として水素の原子核を使用します。
陽子は,まず陽子線用のリニアックで加速された後,シンクロトロンやサイクロトロンなどの円形の大型加速器でさらに光速に近い速度まで加速されます。
陽子は,電子の約1800倍もあるため,陽子を加速するためには,おおがかりな装置が必要です。
この陽子線は放射された後,ある一定の深さで完全に止まりますが,その停止直前に最大のエネルギーを放出します。
さらに,運動を停止した位置よりへ先へはエネルギーを放出しません。
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陽子線がその運動を停止し,最も大きなエネルギーを放出する深さをブラッグピークといいます。
陽子線のブラッグピークの位置はシャープなピンポイントであるため,設定した位置よりも深い部分にはまったく影響しません。
ブラッグピークを腫瘍の中心に合わせても,正常細胞にダメージを与えることはありませんが,死滅するがん細胞もブラッグピーク付近のみの一部です。
そこで,ピークの設定深度を少しずつ変えながら照射することで,ブラッグピークの幅をがんの厚みに合わせて広げます。これを拡大ブラッグピークといいます。
さらに,拡大ブラッグピークをつくった陽子線を多方向から照射することで,より正常細胞への影響を低下させることができます。
現在,一般的に使用されているエックス線では,体表面ほどエネルギーが強いため,がん細胞へ到達する前に,正常細胞も被曝してしまいます。
さらにがん細胞に届いた放射線は,がん細胞を突き抜けて,その先の正常細胞にまで,届いてしまいます。
陽子線は腫瘍内部で最大のエネルギーを放出して,がん細胞を破壊するため,正常細胞への影響は少ない体にやさしい放射線治療法といえます。
陽子線治療は,理論上,ほとんどすべてのがんに有効と考えられています。
しかし,まだ治療可能な施設が少なく,臨床データも少なく,どのようながんに有効なのかは研究途上にあるといえます。
たとえば,前立腺がんに関しては,IMRTの方が陽子線治療よりも合併症が少なく,陽子線治療の優位性はないという報告もあります。
施設によって,適応可能ながん種は異なりますが,国立がんセンター東病院を例にとると,脳腫瘍,頭頸部がん,食道がん,肺がん(早期),前立腺がん,肝臓がん,直腸がん(一部),胆嚢がん(一部),舌がん(一部),甲状腺がん(一部)などが対象となっています。
一般的に,胃がんや大腸がんは,放射線による潰傷ができやすいため,陽子線治療の対象となりません。
今後は研究データも増え,適応できるがん種も増えると予想されますが,まだ保険適応とはなっていません。
粒子線治療費としては288万円かかり,先進医療の認可を受けている施設では,粒子線治療費以外は健康保険が適用となりますが,それでも,再診料,検査費用等を含めると総額は約300万円程度と高額になります。
ただ,このような費用を全額保証する民間の保険もあります。
陽子線治療の施設も多額の費用がかかるため,現在まで実施している施設は以下に限られています。
陽子線治療が受けられる施設は,平成25年4月現在で以下の8カ所です。
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陽子線治療実施施設 |
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