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重粒子線は破壊力が大きな究極の放射線療法
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重粒子とは電子より重い粒子のことをいい,重粒子線治療では,炭素の原子核が使用されています。
重粒子線の性質は,基本的には陽子線とは変わりません。
体内に放射された重粒子はブラックピークと呼ばれる位置で最大のエネルギーを放出し,その後は運動を停止します。
重粒子を利用したこの方法では,陽子線同様に,ブラッグピークという性質により,正常細胞への影響が少ないというメリットがあります。
陽子線治療と異なっている点は陽子よりも重い炭素原子核を使用しているため,その破壊力は陽子線の約3倍といわれています。 |
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重粒子線の特徴として,陽子線よりもこのブラッグピークまでのエネルギー放出量がさらに少ない,すなわち,腫瘍に対する線量の集中性がさらに高いという特徴があります。
したがって,陽子線よりも照射回数を減らすことができ,正常細胞への影響もさらに少なくすることが可能です。
また,エックス線は,がんの組織型によって感受性が大きく異なったり,低酸素状態にあるがん細胞には効果も低かったりしますが,重粒子線はそのような条件に関わらず効果を発揮できます。
現在,重粒子線で適応できるがんとして,脳腫瘍,頭蓋底腫瘍,目の悪性黒色腫,頭頸部がん,骨腫瘍,肺がん,肝臓がん,膵臓がん,前立腺がん,子宮がん,直腸がん,骨軟部腫瘍などで,適応範囲も広いといえます。
この中でも特に骨軟部腫瘍はエックス線では十分な効果を上げることは困難でしたが,重粒子線治療では好成績をあげています。
重粒子線治療では,正確な放射を可能にするために,照射中にからだが動かないよう,樹脂製の固定用シートを使用し,照射に必要なマーキングを行ないます。
所要時間は,位置決定に時間をかけるため,約30分程度かかりますが,照射そのものは1分間という短時間で終わります。
ただし,この重粒子線治療は,理論上優れていても,研究途上にあるということは否定できず,解決しなければならない課題もあります。
たとえば,重粒子線はその破壊力が強いがために,狙いどおりに照射できなければ,正常組織に及ぼすダメージも大きななものになってしまうということです。
治療時に,臓器が動いてしまったり,その形が照射前と微妙に変わる場合もあります。
内部で最大のエネルギーを放出するという,理論上はいくら理想的であったとしても,臓器と照射野のズレはどうしても起こり,その結果,一部ではありますが腸管障害などの重篤な後遺症も報告されています。
そのようなことから,現在では,動く臓器にどのように対応していくか,研究が進められています。
現在重粒子線治療は,保険適応とならず,治療費用が300万円と高額なことや実施施設が少ないことも課題といえるでしょう。
重粒子線の装置は巨大なもので莫大な費用がかかるため,現在,国内の施設は,放射線医学総合研究所の重粒子医学センター病院,群馬大学重粒子線医学研究センター,兵庫県立粒子線医療センター,九州重粒子線がん治療センターの4カ所です。
理論上は,理想的な装置であるがゆえに,今後の研究と進歩が期待されるところでもあり,装置の小型化の研究も進められています。
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