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ホウ素中性子捕捉療法はがん細胞を選択的に狙える治療
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技術的な進歩により,放射線治療は進歩し,ピンポイントで腫瘍のみに高線量を照射することが可能になってきました。
しかし,それは腫瘍が一つに固まっいる場合であり,正常細胞の中に不規則に広がっているがんの場合,がん細胞のみを選択して照射することはできません。
そのような状態のがんに広い範囲で照射すれば,がん細胞だけでなく,正常細胞にもダメージを与えてしまいます。
そのような,正常細胞とがん細胞が混じり合っているようながんに有効な放射線治療法がホウ素中性子捕捉療法(BNCT療法)なのです。
ホウ素が中性子と衝突すると,アルファ粒子とリチウム原子核に分裂します。
ホウ素中性子捕捉療法では,この性質を利用したものです。
ホウ素を点滴によってあらかじめ投与しますが,がん細胞ではこのホウ素を取り込みますが,正常細胞は取り込みません。
そして,がん細胞にホウ素が集まったとき熱中性子線をに照射します。
このとき,ホウ素との核反応によって発生する粒子線(α粒子とリチウム核)により,がん細胞のみを選択的に死滅させます。
この粒子線の飛距離は細胞1個分の10ミクロン程度なので,周囲の正常細胞にはほとんど影響を与えないのです。 |
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サイクロトロン |
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中性子照射治療室 |
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また,このα粒子とリチウム核の粒子線はエックス線やガンマ線に比べて細胞に対する破壊力がはるかに強く,治療効果が高いことが証明されています。
治療装置ではまず,サイクロトロンで陽子を加速します。
次に,加速された陽子線を中性子照射治療部照射装置まで運び,陽子ビームをターゲットに衝突させることで,中性子を発生させます。
発生した中性子は,エネルギーが強すぎるため,減速させた後,標的となるがん細胞に照射します。
このような放射線治療の原理は1930年代に考案され,1950年代にはすでに米国で研究用の原子炉などを使って臨床研究が始まっていました。
しかし,当時使われたホウ素は,がん細胞への集積性が低く,あまり良い治療成績ではありませんでした。
一方,日本では帝京大学畠中担医師らが,1960年から1990年にかけて研究を進めました。
彼は米国との共同研究にも参加し,BSHというがん細胞に集積性の高いホウ素化合物を開発することで,高い治療効果をあげることができるようになったのです。
ホウ素中性子捕捉療法が最も向いているとされているがんが,悪性神経膠腫と悪性黒色腫(メラノーマ)です。
これらのがんは正常組織の中に,微少ながんが混じり合っており,がん細胞のみを選択的に殺せるホウ素中性子捕捉療法はこれらのがんに適している治療法です。
その他に治療可能ながんとして,脳腫瘍や頭頸部がん,肝臓がん,肺がん,骨軟部肉腫のほか,アスベストが原因の中皮腫があり,臨床試験も進行中です。
大阪医科大学の報告では脳腫瘍の治療法では従来の治療法での治療成績を上回っているとのことです。
通常,1回から数回の放射で治療を終えることができ,患者にとって負担の軽い治療法といえます。
ただ,中性子は透過性が弱いため,体の表面から5cm以上深い部分には中性子が届きにくく,治療効果が得られないという弱点もあります。
現在,原子炉を使わず,中性子を加速する機器も開発され,これから,総合南東北病院(福島県郡山市)に設置され,平成27年度から治験を開始する予定です。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)実施施設
施設 |
適応がん種 |
所在地 |
京都大学原子炉実験所
粒子線腫瘍学研究センター |
脳腫瘍,頭頸部がん,肝臓がん,骨・軟部肉腫,肺がん,中皮腫,等 |
大阪府泉南郡熊取町朝代西2
電話072-451-2475 |
大阪医科大学
脳神経外科 |
脳腫瘍 |
大阪府高槻市大学町2-7
電話072-683-1221 |
川崎医科大学
放射線科 |
頭頸部がん,悪性黒色腫 |
岡山県倉敷市松島577
電話086-462-1111 |
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