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切らずにすむ頭頸部がんでの放射線の役割は重要
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顔面から頸部までにできるがんをまとめて,頭頸部がんといいます。
頭頸部がんは,がん全体に占める割合は約5%に過ぎませんが,聴覚,嗅覚,味覚など重要な感覚器官があるばかりではなく,呼吸,発声,摂食,嚥下など,生命の維持に欠かせない機能が集まっています。
さらに,顔を中心として露出している部分も多い部位です。
したがって,手術により発声機能を失うなど,QOLが大きく低下することもあり,また,露出部分に手術の痕跡が残ることは精神的にも大きな苦痛となります。
このような理由から,頭頸部がんは放射線療法が重視され,利用されるケースの多いがんです。
発生部位によってがんの性質が異なるので治療法も異なりまが,頭頸部がんは,比較的放射線が効きやすい扁平上皮がんが多く,放射線療法は有効といえます。
頭頸部がんにおいて,QOLを損なわないですむ放射線療法の役割はたいへん重要であるといえるでしょう。
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舌がん
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切除手術をすれば,治療後の会話や経口摂取に支障をきたすため,放射線療法のメリットは大きいといえます。
リンパ節転移がなく,がんの最大径が4cm以下ならば,放射線線源を直接腫瘍に入れる密封小源治療が可能です。
しかし,4cm以上ですと,手術が優先となり,術後に放射線療法がおこなわれます。
手術が困難な部位などの場合,術前照射で,腫瘍を縮小させてから,手術をおこなう場合もあります。
密封小線源治療では,線源としてイリジウム192が使用されることが多く,高線量率照射で,線源を入れるアプリケーターの挿入や管理のため,入院が必要となります。
副作用の発生頻度は晩期障害など,外部照射より少ないといわれています。
急性期の副作用として,口腔や咽頭の粘膜炎,唾液の分泌障害,味覚障害などがあらわれます。
晩期の副作用として,粘膜の難治性潰瘍や下顎骨の骨髄炎や壊死などが起きる場合があり,特に注意が必要です。
なお,舌の先端にできたがんは,遅い管を口の中に入れ,電子線照射をおこなう場合もあります。
副作用は急性のものと晩発性のものとがあり,急性期には,皮膚炎,味覚障害,唾液分障害,嚥下困難,聴力障害などがみられます。
また,晩発性障害として,唾液分泌低下,脳神経障害,視力障害などがみられます。
これらの器官や組織は生きていくうえで重要なものであり,これらの副作用を防ぐ意味でも,IMRTか,粒子線での治療がすすめられます。
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咽頭がん
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咽頭は上部咽頭・中部咽頭・下部咽頭に分けられますが,それぞれ治療法も異なっています。
咽頭がんの多くは,放射線の感受性が高い扁平上皮がんなので,ほとんどの病期で放射線療法が中心となります。
また,日本大学医学部付属板橋病院耳鼻咽喉科教授の木田亮紀教授のグループが開発した,頭頸部がんの超選択的動注化学と放射線の併用療法は大きな成果をあげています。
上咽頭がん
上咽頭がんは,手術が困難な部位でもあり,放射線療法が中心となります。
治療後も腫瘍が残ってしまった場合や再発した場合には,頸部リンパ節や周囲の組織を切除します。
放射線だけでは根治が,難しいので,現在では,放射線と抗がん剤を併用する化学放射線療法が行われることが多いようです。
中咽頭がん
以前は放射線が中心でしたが,最近では技術の進歩により,手術も行われようになっています。
しかし,大きく切除すると,発生障害や嚥下障害など,QOLの低下もあります。
3〜4a期の進行がんでは,手術が基本ですが,早期のがんには,咽頭を温存が可能な放射線治療を行います。
病期1期,2期ならば手術も放射線療法でも差がないとされており,放射線治療が優先されます。
特に発症数が多い扁桃腺のがんは,特に放射線の感受性が高く,有効です。
がんの場所や大きさによっては,放射性同位体を挿入する密封小線源治療が行われます。
この方法は体外照射と比べて正常な組織のダメージが少なく,副作用を小さく抑えることができます。
下咽頭がん
下咽頭がんは,早期であれば,放射線療法単独で治癒します。しかし早期発見が困難な部位でもあり,放射線治療や化学療法だけではなかなか完治することは少ないがんです。
したがって,下咽頭がんの治療は,手術が中心です。放射線療法や化学療法は,外科手術と併用するか,手術不能な進行がんの患者に対して行います。
手術では,リンパ節の郭清や,喉頭や咽頭の切除を行うことが多く,食道も切除することもあります。
そのため,発声や食事の障害が起こりやすくなります。そこで,小腸を切断して,再建する場合もあります。
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喉頭がん |
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喉頭がんの発症数はがん全体の中でしめる割合は約2%程度で,少ないといえますが,頭頸部のがんの中では最も発症頻度が高いがんです。
喉頭がんの治療は放射線治療と外科手術が基本です。早期がんに対しては,放射線治療やレーザー治療が行われます。
手術で喉頭を全摘出すると発声ができなくなり,QOLの低下が問題になることから,近年では,進行がんに対しても喉頭を温存するような治療法が行われるようになりました。
放射線のみで,進行がんを治癒させることは困難ですが,進行がんでも手術をせずに,化学放射線療法で治療する場合も増えています。
声門がん
病期1〜2期は放射線療法で治療します。喉頭がんの放射線療法の場合,体の外側から喉頭に外部照射をおこないます。
1回につき数分の照射を一日一回行うだけですみ,通院で治療可能です。治療後の声の質は,ほぼもとに回復します。
また早期がんでも放射線で効果が上がらない場合は,喉頭の部分切除を行います。
病期3期以降は,喉頭の全摘手術を行いますが,声が出せなくなるなどの問題もあるため,放射線化学同時併用療法で治療するケースが多くなっています。
声門上がん
早期は放射線で治療します。声門上がんは頸部のリンパ節に転移しやすいため,声門がんよりも広範囲に照射します。
しかし,放射線治療で効果があがらない場合は,その喉頭を部分切除します。
病期3期以降は,喉頭を全摘出しますが,放射線治療で腫瘍を縮小してから摘出する方法が取られる場合もあります。
がんが頸部のリンパ節に転移した場合は,転移したリンパ節とその周辺の組織を共に切除する頚部郭清術を行います。
声門下がん
声門下のがんは喉頭がんの中では,頻度が少ないがんですが,他の部位とは治療法は大きく異なり,初期の病期でも放射線療法が採用されるケースは少なく,外科療法による喉頭部分切除が行われるのが一般的です。
がんが限局していれば,喉頭の部分切除を行いますが,声門下がんは初期症状がほぼ無く,発見時にはかなり進行している事が多いので,喉頭全切除を選択することもよくあるケースです。
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