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放射線治療の副作用は正常細胞への照射が原因 |
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化学療法同様に,放射線治療にも副作用がみられます。副作用はがん細胞だけでなく,正常細胞へも放射線が照射されることで起こります。
したがって,放射線治療機器は,いかに正常細胞へのダメージを少なくするかという方向で改良され,進歩してきました。
現在では定位放射線治療という,多方向からピンポイントで照射する技術が確立し,以前よりも大幅に正常細胞への照射を抑えることに成功しています。
しかし,正常細胞への影響がなくなったわけではなく,副作用も多くのものが一過性なものとはいえ,起こります。
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細胞分裂が盛んな細胞ほど,ダメージを受けやすく,副作用もでやすい
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放射線治療では,その照射される放射線により,がん細胞のDNAを切断することで,がん細胞を破壊します。
この作用は抗がん剤同様に,細胞が細胞分裂をおこなっている時に効果を発揮します。
つまり,細胞分裂の盛んな細胞ほど,放射線のダメージを受けやすいというわけです。
がん細胞は,正常細胞と異なり,際限なく細胞分裂を繰り返すため,放射線のダメージを受けやすいという特徴がありますが,正常細胞でも細胞分裂が盛んなところは,影響を受けます。
正常細胞で,細胞分裂が盛んな部位として,毛根細胞,口腔粘膜,消化管粘膜,皮膚,骨髄などがあります。
したがって,このような部位に照射されると,これらの部位がダメージを受け,脱毛,口内炎,食道炎,下痢,皮膚炎,貧血,感染症などの副作用が起こります。
これらの副作用は,照射の線量や範囲,照射部位によって,その程度は異なります。
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放射線療法の副作用はほとんどが照射された部位にあらわれる |
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副作用が抗がん剤の副作用と異なる点は,基本的には照射された部位にしか,あらわれないということです。
抗がん剤は,点滴などにより投与され,血流と共に全身を巡ります。そこで血液の流れるところ,すなわち全身にダメージを与えてしまうわけです。
ところが,放射線は全身に照射されることはなく,局所限定で照射されるため,その照射された部位に応じた副作用しかあらわれません。
たとえば,脱毛など,特に女性の方には気になるところでもありますが,頭部に照射されない限り,脱毛は起こりませんし,頭部でもピンポイントで照射された部位にだけしか起こりません。
放射線療法でも,照射部位に関係なくあらわれることがありますが,放射線宿酔(二日酔様症状)など,ごく一部です。
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放射線療法の副作用には急性と晩発性とがある
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副作用には,治療中に現れる急性の副作用「急性放射線障害」と,治療終了後,半年以上経過して起こる晩発性の「晩発性放射線障害」とがあります。
急性の副作用としては,皮膚炎,口内炎,脱毛,吐き気・おう吐,頭痛,めまい,下痢など様々なものがあります。
これは一過性のもので,生命に関わることはなく,治療後2〜3週間で自然に治癒しますので,あまり心配する必要はありません。
ところが,注意しなければならない副作用が「晩発性放射線障害」です。
これが,起こる確率は長期生存者の数%と,数は少ないものの,治療終了後症状は目にみえないかたちで徐々に進行するため,つい見逃してしまうことも多いようです。
たとえば,治療終了後,肛門からの出血を痔と勘違いし,治療しなかったため,人工肛門になってしまったという症例もあります。
この晩期放射線障害の原因は,照射により,細胞の組織が繊維化したり,血流障害が起こるためといわれています。
晩期障害の種類として,肺繊維症,脳障害,食道狭窄,心不全,肝萎縮,膀胱炎,血尿,下血などがあります。
この中で肺繊維症は治療が困難な副作用でもありますが,抗がん剤との併用で起こりやすくなります。
これらの晩発性障害の中で,重い障害があらわれるのは,きわめてまれといわれており,治療前から必要以上に気に病むことはありません。
ただし,これらの障害には,回復が困難なものもあります。
治療後,これらの異常を見過ごすことのないよう,副作用の正しい知識を持つだけでなく,治療後5年間は診察を継続する必要があります。
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