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めざましく進化した放射線治療技術
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照射線精度を高め,効果をあげた定位放射線治療
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近年の放射線機器の技術革新にはめざましいものがあり,成績を向上させているだけでなく,副作用も抑えられるようになっています。
理想とされる放射線療法は「がん細胞には最大の線量を,正常細胞には最小の線量を」です。
この理想とされる治療に向かって,現在二つの方向で機器は進歩しています。
一つは,「放射線のがん病巣への集中性を高めること。」すなわちピンポイント照射であり,もう一つは「がん病巣へ破壊力の強い放射線を利用すること。」です。
がん病巣への集中性を高める放射線治療として,最も早く開発された技術がガンマナイフです。
このガンマナイフは,脳腫瘍だけに使用されるものです。そこで,この技術をリニアックと呼ばれる放射線装置にも応用し,肺や肝臓などへの正確な照射が可能となりました。
この方法では,リニアックを回転させ,多方向から放射線を照射することで,正常細胞への照射を極力減らし,ガンマナイフと同等に放射線を腫瘍に集中させることができるようになりました。
このように病巣に対し多方向から放射線を集中させる技術を定位放射線照射(Stereotactic Irradiation:STI)と呼んでいます。
さらにマルチリーフコリメータと呼ばれる金属製の遮蔽板をリニアックの照射口に取り付け,腫瘍の形に正確にビームを照射できるようになりました。
これに画像誘導放射線装置IGRTも組み合わされ,さらに正確な照射が可能となりました。
これは,治療計画用の画像と照射直前に撮影した画像を照合し,治療時の体位のずれを補正するものです。
ある調査報告では,定位放射線治療により,病期が1A,1B期の肺がんでは従来の治療より成績が向上しただけでなく,5年生存率が手術の67.57%に対して,77.68%と,手術をも約10%も凌駕する高い成績を残しています
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強度変調放射線治療 IMRTや,胴体追尾も可能なサイバーナイフも登場 |
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ピンポイント照射は理想ではありますが,腫瘍は必ずしも,一つのかたまりとなっているとは限りません。
特に,正常組織を囲むように,複雑にがんが取り囲んでいる場合など,照射角度によっては,放射線が,がん細胞を突き抜けて,正常組織に照射されてしまう場合もあります。そのような場合は照射量を減らす必要があります。
IMRTは,照射角度によって,照射強度を可変できるシステムです。
このIMRTの登場によって,直腸を取り囲むような前立腺がんに特に効果を発揮しています。
一方,ガンマナイフをより進化させたサイバーナイフも登場しています。このサイバーナイフは当初は脳腫瘍のみに使用されていましたが,頭頸部がんや肝臓がん,肺がんにも使用されるようになりました。
この最新のサイバーナイフはロボットアームと小型リニアックを組み合わせたもので,1200ポイントからの3次元照射が可能です。
画像照合による動体追尾システムを搭載し,呼吸によるずれ,体の動きによるずれを補正し,その誤差は1mm以内といわれています。
一方,患者の体内に金の粒子を埋め込み,金の粒子が一定の位置に来た時に通常のリニアックから照射する,呼吸同期システムも開発されて,呼吸による照射のズレを解消しています。
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がん細胞内で最大のエネルギーを放出する陽子線治療・重粒子線治療 |
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陽子線や重粒子線は粒子が運動を停止する直前に最大のエネルギーを放出するという性質(ブラッグピーク)を利用し,腫瘍内部で粒子が最大のエネルギーを放出し,がん細胞を破壊します。また,その破壊力も強力です。
つまり,陽子線治療や重粒子線治療は,腫瘍の前後では,正常細胞はほとんど放射線の影響を受けず,かつ,がん細胞を強力に破壊できるという,放射線の理想ともいえる装置です。
ただし,効果は固形腫瘍に限定され,装置がおおがかりで高価なため,治療費も高額なこと,まだ,国内では設置数が少ないがことなど課題です。
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がん細胞を選択的に破壊するホウ素中性子捕捉療法 |
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正常細胞とがん細胞が混じり合っているようながんに対し,がん細胞のみを選択的な破壊を可能にした方法がホウ素中性子捕捉療法(BNCT療法)です。
ホウ素を点滴によってあらかじめ投与すると,がん細胞のみがこのホウ素を取り込みます。
そこで,熱中性子線を照射し,がん細胞内部のホウ素が中性子と衝突すると,アルファ粒子とリチウム原子核に分裂し,がん細胞だけを破壊していきます。
このアルファ粒子とリチウム核の粒子線はエックス線やガンマ線に比べて破壊力がはるかに強いといわれています。
このホウ素中性子捕捉療法では,悪性神経膠腫と悪性黒色腫(メラノーマ)の治療に使用されています。
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