定位放射線治療(STI)

     ピンポイント照射技術を完成させた定位放射線治療

   
                                        定位放射線治療
 
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STIとは多方向からの精密照射

 
 

   
定位放射線治療(Stereotactic Irradiation:STI)とは,腫瘍に向けて多方向から,ピンポイントで正確に照射する治療技術を言います。

この定位放射線治療を世界ではじめて実用化した装置が,脳腫瘍の治療に使われているガンマナイフです。

ガンマナイフでは,201個のコバルト60の線源から,脳腫瘍の一点に向かって,半球状に照射されます。

各線源から放出されるガンマ線がヘルメット内の小さな穴を通過することで細いビームとなり,腫瘍に集中することを可能にしています。

このように多方向から一点に高線量の放射線を集中させることを可能にした画期的メカニズムは正常組織への影響を抑えることを可能にし,治療成績も良好なものが得られました。

このガンマナイフの治療では,ナイフで切り取ったかのようなシャープな効果が得られたことからガンマナイフとよばれるようになりました。



日本で開発された原体照射技術

   
ガンマナイフで確立されたピンポイントの照射技術を一般的な放射線治療機リニアックに応用することにも成功しました。

このリニアックでの定位放射線治療における画期的な技術が,腫瘍そのものの形に合わせて照射することを可能にした3次元原体照射とよばれるもので,日本で開発されたものです。

この原体照射では,リニアックの照射口に,マルチリーフコリメータと呼ばれる金属製の遮蔽板を取り付け,その多層構造からなる遮蔽板をスライドさせることで,腫瘍そのものと同じ形に照射することを可能にしました。

さらに,リニアックを回転させ,複数の角度から照射しながらも,その照射形をそれぞれの角度ごとに腫瘍の形に変化させることで,正常組織への影響を抑えることにも成功しました。

この定位放射線照射では,誤差1mm以下の正確な照射が可能となっています。

また,このマルチリーフコリメータは,放射線の集中度が特に高い陽子線や重粒子線の治療装置にも取り付けられ,大きな成果をあげています。

さらに,照射の形だけでなく,ビームの強さも照射角度にって可変できる強度放射線治療(IMRT)も登場しました。

これは,マルチリーフコリメータを高速で動かし,その開閉速度を変化させることで,ビームの強さも変化させることが可能となったのです。

このIMRTでは,腫瘍が正常組織を取り囲むようながんの治療に適しています。

     
リニアック(ライナック)    マルチリーフコリメータ
     


サイバーナイフ・ノバリス・トモセラピーも登場

   

このような定位放射線治療技術を取り入れた装置は,いくつかの種類が開発され,それぞれ特徴を持っています。

サイバーナイフと呼ばれる放射線照射装置は,工業用ロボットに小型されたライナックを取り付け,様々な角度からの立体照射と,動く病変に対しての追尾・補正を可能にしています。

ノバリスと呼ばれる装置はIMRTの一種ですが,CT画像と連動させた精密照射技術は,その誤差0.1mmといわれています。

また,トモセラピーはヘリカルCTのメカニズムを応用し,360度からの照射が可能なだけでなく,放射線も1回転で51方向からの照射が可能で,それだけ正常組織への影響は低くなっています。

これらの定位放射線治療により,放射線治療の副作用が大幅に軽減しただけでなく,手術に匹敵する治療成績をあげることが可能にになりました。

肺など,動く臓器に対する正確な照射は放射線治療の課題でもありますが,腫瘍がある位置に来た時だけ,照射するシステムも開発されており,今後は動く病変に対してもより正確な照射が可能な装置が開発されていくと考えられます。




   
 
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