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甲状腺がんの中心は手術,放射線療法は術後の補助療法
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甲状腺は,人体の基礎代謝を調節する重要な甲状腺ホルモンを分泌する器官です。
甲状腺がんは,乳頭がん,濾胞がん,髄様がん,未分化がんなどにわけられます。
また,悪性リンパ腫が甲状腺だけにあらわれる甲状腺悪性リンパ腫もあります。
これらのなかで多いのが乳頭がんで,全体の約70〜80%を占め,そのうちの90%前後は増殖が遅く,治癒率の高い低危険度群です。
甲状腺がんの治療は手術による成績が良好であり,治癒が期待できるのも手術です。
甲状腺がんは種類や進行度によっても治療方針は大きく異なります。
放射線治療は甲状腺を全摘あるいは部分切除して,その後照射する方法が一般的です。
甲状腺がんの放射線治療では,放射線同位元素(アイソトープ)内服療法が基本となります。
甲状腺はヨウ素(ヨード)を取り込やすいため,ヨウ素の放射性同位元素であるヨウ素131を内服することで,甲状腺にヨウ素131が集積され,その放射線によってがんを死滅させます。
また,甲状腺がんが転移した部位もヨウ素を取り込む性質はあり,たとえば,肺などに転移していても,放射線ヨード療法によって治療は可能です。
アイソトープ内服療法では,唾液腺の分泌障害や放射線宿酔,骨髄抑制などが起こることがありますが,時間の経過とともに治ります。
ヨウ素131が高度に肺に集中した場合,肺線維症が起こることがあり,注意が必要ですが,起こることはまれです。
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乳頭がん
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このがんは成長速度が遅いがんであり,1cm以上の場合,一般的には切除しますが,腫瘍が1cm以下の場合, 経過観察をして,1cm以上になるようでしたら手術を行います。
検査でリンパ節の転移が見られた時はリンパ節を郭清します。
乳頭がんばリンパ節転移を起こしやすいがんですが,リンパ節転移の有無が,必ずしも治癒率の低下に結びつくとは限らないという特徴もあります。
腫瘍が気管や神経まで浸潤している場合は気管や神経まで切除しますが,肺まで転移しているケースも多く,骨にも転移が見られることがあります。
その場合,甲状腺切除後にアイソトープ内服療法(放射線ヨード療法),抗がん剤治療,放射線療法を併用します。
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濾胞がん
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濾胞がんは周囲の臓器やリンパ節に転移することは少なく,他に転移さえなければ,ほとんど手術で治ります。
遠隔転移がない場合,甲状腺の片側を切除する腺葉手術で治療しますが,遠隔転移がある場合は,甲状腺全摘手術になります。
その後は放射性ヨードによるシンチグラム検査を行い,転移した状態の診断をします。
そして,アイソトープ内服療法をおこなって,転移した腫瘍の治療を行います。
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髄様がん
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髄様がんには遺伝子の突然変異が原因の遺伝性のものと,遺とは無関係のに散発型のものとがあります。
遺伝性の髄様がんの場合,甲状腺の両側腺葉にがんが発生するため,甲状腺全摘手術が必要です。
通常リンパ節郭清も行います。遠隔転移が見られる場合には抗がん剤治療などが行われます。
予後は乳頭がんや濾胞がんなどよりも良くはありません。
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未分化がん・悪性リンパ腫
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未分化がんは悪性度が高く,治癒が期待できないケースがほとんどです。
手術だけでは対応できないことが多く,放射線療法や抗がん剤などを組み合わせて治療を行います。
抗がん剤はドキソルビシンとシスプラチン,エトポシドの3剤併用や最近ではタキソールなどの抗がん剤や放射線の併用療法もおこなわれています。
悪性リンパ腫が甲状腺の部位にあらわれた場合,抗がん剤と放射線治療が基本となります。
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