頸部照射の副作用     

   
                                               
                                            頸部照射の 副作用
 
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口内炎

 
 
口腔粘膜は細胞分裂がさかんであり,放射線の影響を受けやすい部位でもあります。

口内炎は,放射線治療をはじめてから2~3週間であらわれ,最初は粘膜の発赤がみられ,焼けた感じやしみる感じがします。

やがて粘膜に潰瘍や粘膜の腫れ,白い斑点が出現し,さらに進むと痛みをともなう潰瘍や出血がみられるようになります。

さらに症状が悪化すると,口の中全体が潰瘍化し,食べ物を口に含んだり,飲み込むことができなくなる嚥下障害となる場合もあります。

特に抗がん剤と放射線を併用した化学放射線治療ではこのような副作用が強くでます。

通常は,口内粘膜が再生をはじめる1週間から2週間以内にほぼ治りますが,細菌感染がおこると治りにくくなります。

また,口内炎と共に,唾液の分泌も低下し,口内乾燥も起こりやすくなります。

口内乾燥は,口内粘膜への刺激を強め,症状が悪化することが多くなります。

症状を悪化させないためには,口の中を清潔にすることが大切です。

ポピドンヨードなどの消毒薬を刺激のない程度に薄めて,こまめにうがいをしたり,朝晩や毎食後にやわらかい歯ブラシで歯磨きを行いましょう。

舌の表面のブラッシングも,清潔に保つために,おこなうとよいでしょう。

また,刺激の強い辛いものや酸味の強いもの,熱いものなどの食べ物は避けましょう。

口内炎の症状がでたら,医師に伝えましょう。症状によって,鎮痛薬や軟膏,内服薬を処方されます。口内乾燥が強い場合は人工唾液が処方される場合もあります。


 
 

味覚障害

 
 
味を知覚する舌にある味蕾(みらい)と呼ばれる器官は,味細胞(みさいぼう)の集まりですが,この細胞は寿命が短く,細胞分裂がさかんなため,放射線治療で放射線の影響を受けると死滅し,その数が減ることで,味が感じにくくなります。

また,その味の情報を脳に伝える舌咽神経もダメージを受けると,味が感じられなくなります。

味覚も変化し,甘味や酸味が感じにくくなり,苦みが強く感じられるようになったりもします。

放射線は唾液線にもダメージを与え,唾液が出にくくなると,味蕾が正常でも味が感じられにくくなります。

これらの症状は数ヶ月で,自然に解消していきます。長期間続くこともありますが,まれなケースです。

 
 

咽頭炎・喉頭炎(のどの痛み・声がれ)

 
 
咽頭は鼻腔や口腔の奥にある管状の食道の入り口までの組織で,上咽頭,中咽頭,下咽頭の3つに分けられます。

また,喉頭とは,咽頭と気管の間の部分で,呼吸のための気道の一部でもあり,中央部に声帯があります。

放射線治療での影響により,これら咽頭や喉頭の粘膜がダメージを受け炎症をおこすことがあります。

ものを飲み込む時の痛み,乾燥感,咳やたん,声がれといった症状がみられるようになります。

声がれは声帯がむくみをおこし,発声に影響を与えるためです。

これらの症状は治療をはじめてから2~3週間で発症する急性のもので,治療が終わると自然に解消していきます。

これらの症状への対策としては,うがいをこまめにおこない,マスクをして清潔を保つと同時に乾燥させない工夫が必要です。

食べ物も熱いものや辛いもの,アルコールなどは控えましょう。

症状がつらい場合,医師からはステロイド薬の吸入剤などが処方されます。


 
 

甲状腺機能低下

 
 
晩発性の頸部の副作用として,甲状腺の機能が低下することがあります。

これは,甲状腺に放射線が照射されることで,甲状腺ホルモンの合成や,ホルモンの分泌量が低下することで起こります。

症状がでることはまれですが,倦怠感やむくみ,食欲低下などがみられることがあります。

治療終了後に起こり,気づかないことが多いので,定期的な血液検査によるチェックが大切です。

機能低下が顕著場合には,甲状腺ホルモンの補充がおこなわれます。


 
 

放射線脊髄症(手足のまひ・しびれ)

 
 
放射線治療により,脊髄に多くの放射線が照射された場合,半年~1年後に,手足のまひやしびれ,歩行困難などがみられることがあります。

これは,脊髄の神経が放射線により,変性したり,壊死したりすることで起こります。

この症状に対する有効な治療法はなく,脊髄にできるだけ,照射をしない工夫が必要です。


 
 
開口障害
 
 
開口障害とは,治療終了後,ものを噛んだり,のみこんだりすることが困難になる症状をいいます。

その原因は,あごに放射線が照射されることにより,食物を咀嚼する筋肉がダメージを受け,筋肉が痙攣したり,口を開けることができなくなるからです。

この開口障害は放射線治療終了後3〜6ヶ月の間に起こることが多く,放置しておくと,咀嚼筋やあごの関節が硬直化して,治らなくなってしましいます。

口が開けにくいなどの症状がみられたら,すぐに医師に連絡をして,適切なアドバイスを受け,リハビリをおこなうなど,早めの対処が大切です。

 
 
顎骨(がつこつ)の壊死
 
 
顎骨に多くの放射線が照射された場合,あごの骨が炎症を起こし,さらには壊死を起こす場合があります。

放射線照射で顎の骨の血の流れが悪くなると,部分的に顎の骨が炎症を起こし,骨組織が死んでいきます。

この症状は,顎骨壊死とよばれる状態であり,顎の骨がもろくなったところに加え,口内の細菌が入り込むことによる慢性的な炎症が原因です。

特に照射器官中や照射直後に抜歯をすると,歯槽骨から細菌が入りやすくなるため,炎症から顎骨の壊死のリスクが高くなります。

抜歯が必要な場合は事前に歯科で処置をしておくことが大切です。



   
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